文化沼ってなに?

Text:
清水柊子
Logo design:
浦川彰太

『文化沼(ぶんかぬま)』

これが私たちがVEJ甲府支社2階に構えるカルチャーショップ&スペース名である。

未だ全容が明らかになっていない新規事業であるが、オープンの経緯や意気込みをここですこしご紹介していきたいと思う。

そもそもなぜ文化沼なのか。

甲府支社は、甲府の中心に拠点を構えて7年目。
開所当時は右も左もわからずであったが、この町で仕事をしていくようになり、たくさんの人に出会ってきた。出会う人の事業や取り組みはどれも魅力的なものばかりであるのは間違いないが、町は年々昔のような人出や活気が失われ、寂しくなっているような気がしていた。

支社長の宮沢(ミッチェ)から、
「2階を借りて何か新しいことをやってみたい!柊子、店長やりなよ!」
と言われたのは、そんなことを思っていたもう一年以上前のこと。

相変わらず思いつきが過ぎる男ではあるが、今回ばかりは素直に面白そうだなと思った。

新たなスペースを借りるのなら、WEB制作とは別のアプローチがしたいと話し合いを重ねていた時、私は「パセオ(現在はココリという商業施設)」という甲府の人ならまず懐かしむであろう、昔あったファッションビルのことをふと思い出した。

1990〜2000年代の私が学生だった当時は、甲府の中心街にも商業ビルや映画館、ゲームセンターなどが立ち並んでおり、中心に遊びに行くのが私達のステータスであった。
パセオも全盛期は、個性的なアパレル店舗に加えて楽器屋、アニメイト、古着屋、アジアン雑貨、占いコーナー、プリクラランドなどのテナントが館の中にひしめき合っていた。

母親と行くと、「天井が低くて人が多いから息が詰まる」と言われるのでパセオにはいつも友達と通っていた。「なんかこれいいよね」「かわいい」などと、ただ服や雑貨を見て友達と話すのが楽しくて、好きな空間だった。

惜しくもパセオは高校卒業と同時期に建て替えられてしまったが、恐らく私たちの青春の一ページとして刻まれていたはずで、そこは田舎ならでは(皮肉も込めている)の流行りに沿った感覚と、その頃生み出されていたファッションの価値観表現、というのが融合したビルだった気がする。

私はそんな「パセオのような場を再来させたい!」と漠然と思った。

雑多に色んなものが詰まっているという意味ではない。
訪れてくれた人が「なんかいいな」を感じられて、「流行(や個性)の発信」、「(モノゴトに対する)価値観の表現」ができるという意味である。

そして、それらを表現する言葉を店舗名にしたいと思い、甲府支社のみんなと悩みに悩んだが、それには『文化』の二文字が不可欠なのではないかということになった。

奇妙に聞こえる『沼』を最後につけたのは、「沼る(ハマる・没頭する)」という意味をもつ通俗的な表現を用いて、今の時代背景を切り取りたかったから。
「あの頃文化沼っていうお店があったよね〜」と、いつか誰かが誰かに話して欲しい、ある意味一時的に何か人の心に残ることをやってみたいという、“長い目で”に逆行した表現をあえて用いた。

これが店舗名を『文化沼』にした経緯である。

文化沼は、店舗運営未経験である私たちの初体験がたくさん詰まった場になると思うが、

・自分たちが「いいな」と思うものを届ける
・ありそうでなかったイベント・展示の開催
・ネットとリアルの融合

まず、この3つから実現に向けて動き出している。

普段は、WEB制作というクライアントの思いを受けてカタチにする仕事をしているが、私たち自身が好むものを仕入れたり、オリジナル商品の開発・販売をすることで、自分たちがいいと思えるものを表現したい。
そして、ハイライフ八ヶ岳をはじめとした音楽イベント制作などで培ってきたノウハウを生かして、私たちが好きだと思う人を巻き込んでイベントや展示もしたい。
また、本業も生かして、店舗と同じプライオリティでのネットショップ運営もしていきたい。

そう、見ての通りやりたいことが初めから山積みなのである。

でも考えをみんなで共有したり、話し合ったり、これを実現するために一つ一つ実行することが、文化の始まりなのではないかと思う。

そんなこんなで構想1年。
いよいよオープンの日が迫っている。