BUNKANUMA REVIEW

気になるあの人が
気になるアレコレをご紹介!
映画『夜明けのすべて』

自分らしくいられなかったり思うようにいかないことがあった時に、人からの声かけや会話とかちょっとしたことで気が晴れたりすることがある。この作品では、そんなちょっとした優しい言葉や行動が積み重なって優しい世界が生まれてて、ラストのシーンがジーンと沁みわたって、ほろっと涙が流れた。希望を持つって難しいけど、夜明けを迎えられた人は生きていけると思えた。
最近観て心温まった映画。

文化資本の経営

五味醤油の五味仁から「これからは”文化”だってよ!」って言って貸してくれた本。
まだ全部飲み切ってないけど、冒頭の文章だけで激しく共感した。
”文化資本”
経済資本の時代から文化資本が主役になると。文化沼でも”文化”について追及しているわけだけど、この本で語られる文化はとても範囲が広くわかりやすい。どの企業にも社風や風土など文化があって、それが個性であり、商品やサービスになるわけで、改めてどの企業も自分たちが大事にする”文化”を資産として、見える化や認識することはとても大事だと感じた。

コナン・ドイル ショートセレクション
名探偵ホームズ 踊る人形

読書には挫折がつきものではないだろうか。世界的な文学作品や名著と呼ばれる本を手に取っては、何冊も、いや、何十冊も読了できぬまま見送ってきた。ある日、近所の図書館のウィンドウで司書さんがおすすめしていた本書。小学校高学年から対象とのことで読んでみるとあら不思議。平易な文章で訳されており驚くほどするする入る。本当に“ショートストーリー”だから、普段本を全く読まない人にも強く勧めたい。エンターテイメント的な読書体験ができるから。シリーズの他の本の制覇を目論み、手を伸ばし続けている。騙されたと思ってぜひともページをめくってほしい。
著者:千葉茂樹・訳、ヨシタケシンスケ・絵
出版社:理論社

「意味や理由に飼い慣らされる私たちは、それが見当たらない状態で考え続けることが苦手になってしまった。こうして、言葉を拾うコーナーをやっておきながら、矛盾したことを言うようだが、言葉を探しすぎる、拾いすぎるのもよくないのだろう。」(本書213ページより引用)

2022年2月12日放送のNHK ETV特集での詩人・谷川俊太郎の言葉「(前略)存在っていうことを、言葉を介さないで感じ取るってことが、すごく大事だと僕は思ってんのね。」を受けての文章。本書は、幅広いメディアで連載を持ち、ラジオパーソナリティとしての顔も持つライターの著者が、日々目にする本、新聞、ラジオ、テレビ番組、CM、ウェブメディアなどから言葉を拾い、考察する連載に大幅に加筆してまとめたもの。言葉の本質を問い続ける著者を立ち止まらせるのもまた言葉。洪水のように情報を浴び続ける現代人に、答えを急がずにじっくりと考える大切さを訴え続ける。武田砂鉄の本はどれも素晴らしいが、もし未読の方がいらしたらまずはこの本を差し出したい。連載は『暮しの手帖』で現在も続行中。

著者:武田砂鉄
出版社:暮しの手帖社

映画『グランツーリスモ』

ゲーマーがプロのレースに挑戦する実話を基にした物語。主人公と同じく幼少期にレーサーになりたくて、グランツーリスモを毎日やっていたあの頃を思い出しました。家にコックピット作ろうか悩む。

大寒波が襲う世界でシェルターに入ったことで、500年の眠りから覚めた舞鶴太郎。ともにシェルターに入った家族はとうの昔に生き絶え、地上に上がると人っこ一人見当たらず壊滅的な環境でーー。まるで初期化された地球を生きていく物語はもちろんフィクションなのだが、急速に環境が変わる現代を目の当たりにすると本当にこんな未来が待ち受けているのではないだろうかと妙なリアリティがある。貨幣に権力、国家に翻弄されながら自身に向き合っていく姿に、真の豊かさとは何かを問うてくる。文明の進化で世の中はたしかに便利になった。しかし便利になりすぎてはいないか。人口減少のこの日本に高層ビルを建て続ける人間たちに無言で差し出したい気持ちだ。店内にスタッフの私物があるので、文化沼でも読めます!

著者:山田芳裕
出版社:講談社

ポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生

ポテトチップスを嫌いな人に出会ったことがない。それくらい国民に根づいている「国民食」と言っていいのではないだろうか、と本書を読んで改めて思った。「ポテトチップスを透かせば時代が見える」とは名コピー。なぜポテトチップスが戦後の日本で受け入れられ、独自の日本食に変化していったのか。丹念に取材し、資料を読み倒した成果がここに詰まっている。ポテトチップスを軸に進む、戦後の食文化史×日本人論。巻末に「国内ポテトチップス年表」付き。身近な食を紐解いていく愉しさよ。

著者:稲田豊史
出版社:朝日新聞出版

私の愛おしい場所 BOOKS f3の日々

店を続けたい。けれどもう限界。でも続けたい。何度も何度も悩み続けて、店を閉めることにしたその決断の裏側にどんな日々があったのか。何かをこれから始める人や活動を続ける人の声は発せられ続けても、やめてしまった人の話を聴ける機会は極めて少ないのではないだろうか。もう行けなくなってしまった店が確かに存在した記録として、どうかどうか多くの人に読んでほしいと心から思う。きれいごとだけでは店は継続できない。やはり自分の好きな店には通い続けるべきだ。いつなくなってしまうかなんてわからないのだから。

著者:小倉快子
サイズなど:B6/240p/自費出版
価格:1,870円
販売場所:文化沼店頭、文化沼オンラインショップ

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。

40代半ばになり、急激に仕事が減ったライター。生活のためにバイトを転々とするも、時給はいつも最低賃金ーーこれは私の将来の姿では?!と危機感に煽られ、手に取ったら面白すぎて一気読み。政治のことがわからず、質問したいことすら浮かばなかった著者の和田靜香さんが体当たりで国会議員にぶつかっていくノンフィクション。受け止める小川淳也さんの思いや考えに救われ、血の通った国会議員がちゃんと存在していることも知れた。和田さんは執筆にあたり60冊以上の本を読み勉強したという。巻末の「政治問答ブックリスト」に添えられるコメント含めて必読。どんなときにでも知る努力を怠らずにいることって大事。

著者:和田靜香/取材協力・小川淳也
出版社:左右社

月・水・金、週3日発行の消費と流通、マーケティング情報に特化した専門紙。私は幼い頃から新聞というメディアが好きで、現在も毎日図書館で新聞を読むことが日課である。新しいビジネスやトレンドがどのようにして生まれるのか、消費者のマインドの変化など、消費と流通にまつわる社会背景に昔から興味があり、業界研究のために某スーパーマーケットチェーンでアルバイトを続けているほどだ。毎週水曜は、かねてより大ファンの武田砂鉄さんが「武田砂鉄のそもそもそれって」を連載していることも本紙から目を離せないポイント。専門紙だからといって身構える必要はない。紙面をめくれば、そこにはあなたの興味の入口が待っているかもしれない。

発行元:日本経済新聞社

2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年に『ここは退屈迎えに来て』でデビューして以来、ずっと著作や連載などを追いかけている作家の一人。昭和後期に地方で生まれ育った女子の生き様をあぶり出し、細かな感情の機敏を丁寧に掬い上げながら描く点で、彼女の右に出る者はいないだろう。
8章目はTwitterのつぶやきになぞらえて物語が進行するが、作家本人のそれと捉えられるような怒りが節々から感じられる。50年後にこの小説が開かれたとき、「こんな時代もあったんだね」と言われるだろうか。それとも「50年前から私たちを取り巻く環境は何ら変わりがないのか」と嘆かれているだろうか。未来を少しでも変えられるのは、やはり今を生きる私たちに他ならないのである。

著者:山内マリコ
出版社:光文社

2021年2月4日。森喜朗氏の女性蔑視発言に関する謝罪会見の中で「更問い」をしたことで社会を動かすきっかけをつくったTBSラジオの記者、澤田大樹さんと、澤田さんの大学時代の同級生で選挙ライター・キュレーターの宮原ジェフリーさんによる、趣味について語るように政治について語るポッドキャスト番組。「予算委員長の委員会さばきを聴く」「統一地方選の歩き方」「澤田記者が参議院を好きすぎる件」など、報道されることのないネタに切り込んでいき、新たな視点をリスナーに与えてくれる。私はライターとして、いつかお二人に取材することを目標にしている。澤田記者による本『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』もおすすめ。

2019年にイギリスで創刊した、慢性疾患や障害などを抱える当事者の声を集めた雑誌。障害とともに生きる姿を紹介する雑誌は国内外にあるが(例えば『コトノネ』も素晴らしい雑誌である)、それらは第三者である編集者というフィルターを通しての発信であり、当事者の生の声とは異なる。当事者だからこそ伝えられる赤裸々な思いや訴え、時には怒りもある。目に見えず言葉を持たない病があるからこそ、当事者自身が声を露わにできる場所の重要性を感じるのだ。だからこそ、日本の読者へ広く届けたいという思いが私自身に生まれ、3号より日本語訳ブックレットを付随させて国内流通させている。障害がある・ないに関わらず、想像力を膨らませて互いが互いを理解しようとし、認め合える世の中へ変わっていくことを願ってやまない。

価格:2,530円
販売場所:文化沼店頭、Magazine isn’t dead.オンラインストア

『地下街への招待』B2

この表紙に見覚えのあるあなたはきっと甲府通。文化沼から歩いてすぐの場所に、ディープなエリアが広がっているのをご存知だろうか。昭和生まれの小規模な地下街に焦点を当てた本誌は、神戸在住の会社員、Towersさんによる自主出版物。国内の魅惑的な地下街を巡り続けて約130軒、その中から厳選した44箇所を掲載している。前号の「B1」号も合わせてぜひ手にとっていただき、地下街の世界へ迷い込んでほしい。

価格:1,000円
販売場所:文化沼店頭、Magazine isn’t dead.オンラインストア

坂本龍一『12』

2023年3月に亡くなった坂本龍一の遺作。このときが来るのを覚悟していたであろう極限までシンプルだけど力強く美しい音たち。最後にこんな素晴らしい作品を残して、こんな完璧に人生を生きれる人もいるのか、、、という凄みも感じます。

もう終わりにしよう。

スパイク・ジョーンズ作品の天才脚本家と知られるチャーリー・カウフマンの監督作。
ちょっと嫌な夢の終わりをずっと見ているような映画。大好物。

彷徨える河

アマゾンの先住民の世界に入り込んでいく西洋人の映画。異界に入っていくことで現実からどんどん遠い美しい世界へ。モノクロの映像も最高すぎて、ずっと見ていられる。U-NEXTで見れます。

黒人音楽史-奇想の宇宙

黒人霊歌からブルース、JAZZ、HIPHOPへのブラックミュージックの歴史をこれまでアウトサイダーの裏番長列伝として語られがちだった音楽家たちに新たな光を当てて歴史として紡いだ意欲作。作者のアツすぎる思いも読んで伝わってきてニヤニヤしながら読んでしまいます。世界は暗号に満ちているから楽しい!

DSPS / HALF OF ME

台湾のギターポップバンドDSPSの2023年NEWシングル。台湾のバンド透明雑誌や雀班、日本のバンド シャムキャッツやHome comingsなど、2010年代は日台のインディーロックバンドにおいて様々なカタチでの交流が進み、新たな作品が生まれた10年でした。コロナ禍での制限を経て、昨年ごろより日台での行き来が再開されてきたので今後の動きに改めて注目しています。ちなみにボーカルのAmiさんはDJもしており、リモートDJとして私がレギュラーで参加している東京のパーティーに出演してもらった縁も。