BUNKANUMA REVIEW

気になるあの人が
気になるアレコレをご紹介!

大寒波が襲う世界でシェルターに入ったことで、500年の眠りから覚めた舞鶴太郎。ともにシェルターに入った家族はとうの昔に生き絶え、地上に上がると人っこ一人見当たらず壊滅的な環境でーー。まるで初期化された地球を生きていく物語はもちろんフィクションなのだが、急速に環境が変わる現代を目の当たりにすると本当にこんな未来が待ち受けているのではないだろうかと妙なリアリティがある。貨幣に権力、国家に翻弄されながら自身に向き合っていく姿に、真の豊かさとは何かを問うてくる。文明の進化で世の中はたしかに便利になった。しかし便利になりすぎてはいないか。人口減少のこの日本に高層ビルを建て続ける人間たちに無言で差し出したい気持ちだ。店内にスタッフの私物があるので、文化沼でも読めます!

著者:山田芳裕
出版社:講談社